笹舟のような祈り。Mr.Children『祈り 〜涙の軌道』

Mr.Children (an imitation) blood orange

あなたは、大人になるにつれて、純粋だった頃の自分を見失いそうになる日はありませんか?

「あの頃の綺麗な心のままでは生きられない」と、自分の小さなトゲや弱さに諦めを抱いてしまうこともありますよね。

今回はサビの、「さようなら」の復唱でお馴染み、Mr.Childrenの珠玉のバラード『祈り 〜涙の軌道』について書きたいと思います。

大人の胸に痛いほど刺さる葛藤を描きながらも、最後には流した涙を丸ごと肯定してくれる、圧倒的な救いに満ちた大名曲を紹介です。

💿 楽曲情報

 発売日:2012年4月18日(34thシングル)

 収録アルバム: 『[(an imitation) blood orange]』

タイアップ:映画『僕等がいた』(前篇)主題歌

1. 悴んだ手の温もりと、見え隠れするお互いの「本心」

この曲は、どこか切なくも温かい、冬のワンシーンのようなAメロから静かに幕を開けます。

「悴(かじか)んだ君の手を握り締めると『このまま時間が止まれば…』って思う覗き込むような目が嘘を探してる馬鹿だな 何も出てきやしないと笑って答える」

今この瞬間を心から大切にしている主人公。悴んだ「君」の手を握りしめながら、愛おしさと同時に、相手が今何を思っているのか、その本心を探っているような繊細な情景が浮かび上がります。

「覗き込むような目が嘘を探してる」

相手を真っ直ぐに愛しているからこそ、相手のちょっとした視線の動きに敏感になり、お互いの本音を確かめ合おうとする。そんなピュアで、少しだけヒリヒリするような二人の心理戦が、この短いフレーズに凝縮されているのです。

2. うっすらと見えてきた夢。未来を無理にコントロールしないという選択

「遠い未来を夢見たり 憂いたり今日も頭の中で行ったり来たり触らないで なるべく手を加えぬように 心の軌道を見届けたい」

遠い未来のことを考えては、期待に胸を膨らませたり、逆に現実という不安に駆られたりする。そんな主人公の頭の中の行ったり来たりは、まさに未来への「夢」そのものなのかなと思います。

普通なら、理想の未来にするために必死に計画を立てたり、自分の都合の良いように「色付け」したくなったりしますよね。しかしここでの主人公は、無理に未来をコントロールしようとはしません。

自分がこれからどう変わっていくのか、二人の関係がどこへ向かうのか。自分のエゴで手を加えるのではなく、「時間に身を委ねて、ありのままの心の軌道を見届けたい」と願っているのです。この静かな決意の中に、主人公の奥深い優しさが滲み出ています。

3. 諦めそうになる自分へ告げる「さようなら」

「さようなら さようなら さようなら 夢に泥を塗りつける自分の醜さに 無防備な夢想家だって 誰かが揶揄(やゆ)しても 揺るがぬ想いを 願いを 持ち続けたい」

初めてこの曲を聴いたとき、「別れの歌なのかな?」と思った方も多いのではないでしょうか。しかし、桜井さんが別れを告げている相手は、大切な「君」ではありません。

現実に打ちのめされ、「どうせ無理だ」と自分の大切な夢に自ら泥を塗って、諦めようとしてしまう「自分自身の醜さ(弱さ)」に対して、決別の「さようなら」を突きつけているのです。

綺麗事だけでは進めない現実の中で、主人公は激しく葛藤しながらも、もう一度前を向こうともがきます。

4. 「純粋」を素直に喜べない、僕らに宿った小さな邪気

「見慣れた場所が違う顔して見えるのも 本当は僕の目線が変わってきたから 『純粋』や『素直』って言葉に悪意を感じてしまうのは きっと僕に もう邪気があるんだね」

子どもの頃はまっすぐに信じられていた綺麗な言葉が、社会に揉まれるうちに、なぜか眩しすぎて、時に嫌味(悪意)のように感じてしまう。

1番では純粋に夢を追いかけてきたけど、ここにきて現実が見えてきてしまいます。

5.  触らないでなるだけ手を加えてこなかった夢への変化

「忘れようとして でも思い起こしたり いくつになっても皆 似たり寄ったり 失くしたくないものが ひとつまたひとつ 心の軌道に色を添えて」

1番のBメロで、主人公は「触らないで なるべく手を加えぬように」と歌われていましたが、この2番のBメロでは、「心の軌道に色を添えて」いきます。

人は誰しも、忘れてしまいたい傷や、いくつになっても捨てきれない未練(忘れようとして でも思い起こしたり)を抱えて生きているかと思いますが、その中にある無くしたくない夢や希望を見失わないように、埋もれてしまっても見つけられるように色付けをしているのでしょう!

6. 「透き通る流れ」に浮かべた自分の思いである笹舟のような「祈り」

「迷ったら その胸の河口から 聞こえてくる流れに耳を澄ませばいい ざわめいた きらめいた 透き通る流れに 笹舟のような 祈りを浮かべればいい」

ここでは、「外を見るのではなく、自分の胸の河口に耳を澄ましてごらん」と言うのです。

「胸の河口」とは、2番Bメロで語られた傷や未練、迷い、(ざわめき)や、夢や幸せ(きらめき)であり、「心の軌道(人生)」そのものだと思います。

そんな思いで揺れ動いて、循環して新鮮になった透き通る流れに、小さくて不安定かもしれないけど、そんな自分の祈りを乗せた笹舟を浮かべて進んでいけばいいというとても優しい表現がされている沁みる歌詞です!

7. 「さようなら」の連呼に隠された、過去の自分との決別

「さようなら さようなら さようなら 憧れを踏みつける自分の弱さに 悲しみが 寂しさが 時々こぼれても 涙の軌道は綺麗な川に変わる そこに笹舟のような祈りを浮かべればいい」

現実の理不尽さに負けて「自分の憧れや夢を踏みつぶしそうになる、情けない過去の自分の弱さ」への決別なのだと感じます。

私がこの曲で一番大好きで、圧倒的に美しいフレーズだと思っています。

生きていれば、悲しみや寂しさが溢れて、涙がこぼれる夜なんて数え切れないほどあります。

でも、その涙は無駄ではなく、流した涙の跡(軌道)が集まって、自分の人生をきらめきながら流れる「綺麗な川」になるんだという、究極の全肯定です。

しかも、その川に浮かべるのは、豪華な客船でも、頑丈なボートでもありません。

手元にある葉っぱで折った、小さくて、水に濡れたらすぐに沈んでしまいそうな、頼りない「笹舟」です。

世界を救うような大きな願いじゃなくていい。

「明日も大切な人が笑っていられますように」

「自分に宿った小さな光が消えませんように」

そんな、不器用で、ささやかで、だけど切実な「笹舟のような祈り」をただそっと浮かべれば、それでいい。

邪気まみれになってしまった私でも、不器用な祈りを持って生きていっていいんだと、聴くたびに心の奥底がじわーっと温かい涙で満たされていきます。

【私の祈り】いつか絶対に、ライブの生演奏で「祈り〜涙の軌道」を聞きたい

私ごとですが、実はこの『祈り 〜涙の軌道』を、まだ一度もライブの生演奏で聴いたことがありません。なかなか演奏されないレア曲です。

ヘッドホンから流れる音源だけでもこれだけ魂が震えるのだから、もしドームやアリーナの大空間で、桜井さんの生の歌声とバンドの演奏でこの曲を浴びたら、一体どれだけの涙が溢れてしまうだろう……。想像するだけで、胸がギュッと締め付けられます。

「いつかライブでこの曲を聴きたい」のうちの一曲でもあります。

次の35周年ツアーでセトリに入ってくれることを、心から祈っています。

【まとめ】

完璧な人間なんていないし、誰もが少しずつ心に邪気を抱えながら生きています。

もし今、あなたが何かに傷つき、流した涙に溺れそうになっているなら、自分の心の中の川の流れに耳を澄まして、落ち着く時間も必要かと思います。

無理をせず、皆さんが健康かつ幸せでいられるように祈りながら、このブログを締めくくりたいと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

【参考】 『祈り 〜涙の軌道』演奏ツアーまとめ

最後に、この名曲が過去にどのライブ、ツアーで演奏されたのかをまとめました。

 ・MR.CHILDREN TOUR POPSAURUS 2012

 ・Mr.Children [(an imitation) blood orange] Tour

・ap bank fes23 1日目

・Mr.Children tour 2023/24 miss you

コメント

タイトルとURLをコピーしました